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 私たちが支援しているラポロアイヌネイションが国際シンポジウム開催のため、クラウドファンディングを始めました。

 世界の先住民が獲得してきた先住権、特に川でサケを獲る権利の成果に学び、 日本社会に先住権についての理解を広めたいとの思いから開催します。

ぜひとも応援よろしくお願い致します!!

 

↓詳しくはこちらから

https://camp-fire.jp/projects/view/645409

 

【事件報告】自然の権利基金通信92号から転載

ラポロアイヌネイション訴訟

 

現行法上、違法に知事の許可を得て十勝川で刺し網漁をしている様子

現行法上、適法に知事の許可を得て十勝川で刺し網漁をしている様子

                                     (撮影者:市川利美) 

 


 アイヌはサケを獲れないのか?

 江戸時代までアイヌは北海道の川で自由にサケを獲っていました。明治以降、政府は「アイヌは和人と同様」という理由からアイヌが自由にサケを捕獲することを禁止しました。アイヌはサケだけでなく、その他の海産物の漁労やエゾシカをはじめとする狩猟そのものを禁止されていったのです。アイヌは先住民族として現在の北海道の土地や自然資源に対する権利を有していましたが、明治政府は一方的にこれらのアイヌの権利を否定していったのです。
  しかし、本当にアイヌにはサケをはじめとする漁猟をする権利がないのでしょうか?ここでは、この問題を考えてみましょう。はじめに、様々な言葉の意味を明らかにし、先住民族の権利とは何か(権利の内容)、権利を有するアイヌはどういう人たちか(権利の主体)、などについて歴史から明らかにし、今、権利回復のために闘っているラポロアイヌネイション(北海道浦幌町のアイヌ集団)の現状について考えていきましょう。


1 言葉の問題
<和人地と蝦夷地>
  江戸時代の北海道は蝦夷が島と言われていました。蝦夷が島には唯一の大名として松前志摩守がいましたが、その支配地は松前という道南の端の小さな場所でした。この城下町周辺を和人地と言いました。江戸時代末期には和人地は広くなりましたが、それでも道南の一部に過ぎません。蝦夷が島の和人地以外の土地は蝦夷地と言われました。
<石高のない松前>
  松前藩には、〇万石という石高はありません。それは蝦夷が島では米作が不可能だったからです。松前藩の収入は米の収穫ではなく、アイヌとの独占的交易権からの収入でした。1604年、徳川家康は松前志摩守に黒印状を発し、蝦夷(アイヌ)との独占的交易権を付与し、他藩のアイヌとの交易を禁止しました。江戸時代、一貫して松前藩はアイヌとの独占的交易権を保障されたのです。
<蝦夷のことは蝦夷次第>
  蝦夷が島の広大な蝦夷地はアイヌの支配領域でした。黒印状では、わざわざ「附」(つけたり)として、蝦夷のことは蝦夷次第とされました。この意味は、アイヌに対して松前藩は一切の権限を有せず、アイヌの自律に任せるということです。つまりアイヌは自決権を持つ集団として幕藩体制では位置づけられていたのです。
<蝦夷地は化外の地(外国)>
  蝦夷地を松前藩が支配していなかったことから、蝦夷地は化外の地であると言われます。化外の地とは、幕藩制の支配が及ばない外国という意味です。この結果、アイヌは樺太などを通じて中国と交易をし「エゾ錦」などの織物を入手し、松前藩と交易をしていました。蝦夷地が幕藩制の支配地だとしたら、蝦夷地は鎖国され、アイヌの中国交易は密貿易になるはずですが、そのようなことはありませんでした。
<アイヌは化外の民>
  蝦夷地に住むアイヌは、化外の民、つまり外国人とされていました。ですから、本州以南のように、藩による人別帳は作られず、土地(農地)に縛られることもなく、税の徴収や賦役もありませんでした。明治になるまでアイヌには一切の課税がありませんでした。

 

2 先住民族の権利について
  日本政府は2019年の「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(施策推進法)ではじめてアイヌを先住民族としました。ただ、江戸時代からのアイヌの様子からすれば、アイヌは明治国家に先立つ先住する民族であることは明らかです。
  ところで、国連は2007年「先住民族の権利に関する国連宣言」(国連宣言)を決議し、日本政府も賛成しました。国連宣言では、先住民族に関する様々な権利について認めています。たとえば自決する権利、土地や自然資源に対する権利、教育や文化に対する権利等々です。
  国連宣言を注意深く見ると、集団の権利(indigenous peoplesの権利)と、個人の権利(indigenous individualsの権利)とに分けて規定していることに気づきます。多くの日本人は「先住民族の権利」を主体ごとに分けて検討しないために「混乱」が生じているように思えます。
  ここで問題にするサケ捕獲権という自然資源に対する権利はアイヌの個人の権利ではなく、アイヌの集団の権利として規定されています。サケに限らず木々を伐採する権利など自然資源への権利は集団の権利とされているのです。
では、このような権利が認められる集団はどのような集団なのでしょうか?

 

3 アイヌとコタン
  そもそも、アイヌとは誰でしょうか?
  現在、アイヌの人口は約1万7000人と言われています(北海道統計)。これは「私はアイヌ」として手を挙げた数です。150年以上にわたる差別と同化政策によって自分がアイヌであることを隠しているアイヌも多く、実際には5万人以上とも言われています。この統計に表れるアイヌ人口はあくまで個人の数です。
  誰がアイヌか、を考えるには、個人と集団とに分けて考える必要があります。
アイヌの集団は国連宣言がいうように自決権を有するので、自決権に基づいて「集団のメンバーシップ」を自分たちで決定できるのです。集団のメンバーと認められればアイヌであることは疑いがありません。この集団は一般にはコタンといわれているので、集団名を付して〇〇コタンアイヌ、××コタンアイヌとなるのです。「アイヌ民族」という言い方は、アイヌの中の権利主体としての集団の意味ではありません。ですから、あまりに漠然とし適切な表現ではありません。
  これに対して個人の場合はどうでしょうか?行政は現在、個々のアイヌに対して「住宅資金援助」や「就学援助」などの公金を支出しています。アイヌへの公金の支出ですから、行政自身が支出対象者であるアイヌとは誰かを明確な基準で示さなければなりません。ただ、行政は定義すら持っておらず、「北海道アイヌ協会が認めた者」とか先祖の戸籍を取り寄せて初めに「カタカナ名」がいればアイヌとするなどの曖昧な基準しかありません。個人の場合は行政が行政目的に沿ってアイヌの定義をすればよいだけなのです。

 

4 アイヌの集団は歴史によってつくられる
  一体、土地や自然資源への権利を有する集団(コタン)とはどのような集団なのでしょうか?歴史的には(明治になるまで)、コタンは数戸から数十戸で構成され、イオルと呼ばれる一定の土地や空間といった支配領域を有していました。支配領域内では、コタンが独占的・排他的権利を有し、コタン構成員による狩猟などが行われていました。コタンの権限はコタンコルクル(長)によって指揮されていました。またコタン内では民事刑事の裁判も行われていました。コタンでは慣習法による民事法、刑事法があり、訴訟手続法もあったのです。コタン間では川での漁猟をめぐっての戦争も行われました。人類学者のジョン・バチェラーは、コタンについて「国家のようだ」と記録しています。そうなのです。アイヌにとってコタンは国家だったのです。支配領域を持ち、独占的・排他的な権利を有し、裁判を行い、自主、自律した存在で、自決権を有し、それが侵害されれば戦争も辞さない存在だったのです。
  幕藩体制下では、「蝦夷のことは蝦夷次第」とされていました(前記)。蝦夷地におけるアイヌの人たちの社会生活は、各地にコタンを作り、各コタン(ときにはコタン共同体)が群雄割拠して、それぞれが独立した国家のように存在していたのです。幕府も藩もこれを犯すことはできませんでした。
  コタンは、このような歴史を持った集団だったので、これらの集団の子孫たちは依然コタンが有していた集団の権限を持っているはずです。国連宣言は、先住民族は、コタンのような権限を有する集団が存在し、これらの集団が自決権を有し、また土地や自然資源に対する権利を有すると認めたものです。
ですから、この集団の権利は、国連宣言や、人権条約や各国の憲法によって「認められた」権利ではなく、この集団の固有の権利であるとされています。近代国家成立以前から、また憲法がつくられる前から存在していた集団の権利ですから、固有の権利(inherent)とされるのは当然なのです。
  このような集団は、集団の権利として自由に川でサケを獲ることができるのです。

 

5 現在の状況
  日本政府は、明治以降において外国であった蝦夷地に一方的に侵略しました。アメリカでは連邦政府がインディアン集団と条約を結んで土地や資源を買い取っていきましたが、日本では「無主の土地」として一方的に入って来たのです。
  各地に存在したコタンは土地を追われ、資源資源を奪われ、コタン集団は解体させられ、アイヌ個人は和人となるように言葉や習慣を否定されました(同化政策)。
  しかし、依然、かつてコタンがあった場所にコタン構成員の子孫たちが暮らしており、彼らが権利を求めて新しい集団を作りました。北海道浦幌町に住むアイヌたちが作ったラポロアイヌネイションはこのような集団です。彼らは、先祖たちのコタンが有していた十勝川河口部でのサケ捕獲の権利はラポロアイヌネイションに引き継がれているとして訴訟を起こしました。
  対する日本政府は、訴訟ではサケ捕獲権がアイヌ集団の固有の権利かどうか、江戸時代までこの権利を有していたにもかかわらず、明治以降政府によってこの権利行使を禁止された、という事実関係について一切「認否」(認めるor 否定する)ことすらしようとしていません。明治以降の侵略の歴史に向き合おうとはしないままです。
  日本の150年の歴史を正すため多くの皆さんのご支援とご協力をお願いします。

 

 (文) ラポロアイヌネイション訴訟弁護団 弁護士 市川 守弘

【事件報告】自然の権利基金通信91号から転載

第3次命の森やんばる訴訟

 

ノグチゲラ

  ノグチゲラ 

やんばるくいな 

 ヤンバルクイナ              


1 やんばるの開発の現状と裁判
沖縄県北部のやんばるは,イタジイを中心にした亜熱帯照葉樹林帯が広がる森林地帯で,ノグチゲラ,ヤンバルクイナ,ヤンバルテナガコガネなどの固有種,希少種が多く生息しています。
やんばるでは,沖縄の本土復帰(1972年)以降,ダム開発,土地改良事業などの大型公共事業が行われてきました。現在問題になっているのは林道開発,伐採,森林施業など林業の名目で行われる開発です。とりわけ森林伐採は,皆伐という草木を全て伐採して山を丸裸にする方式で,毎年10ヘクタールの規模で動植物の生息地が破壊されています。伐採による赤土の流出は,サンゴを初めとした海の生態系にも悪影響を与えます。
林業とはいうものの,伐採した樹木の多くはチップ等として売却され,採算が取れません。しかし,伐採後,植林やその後の森林施業の過程で国庫から多額の補助金が出るため,その補助金目当てに伐採が行われるという悪循環が続いてきました。
結果的に林道建設工事を休止に導いた「第2次命の森やんばる訴訟」(2007年提訴)に続き,2017年,沖縄県民の有志が,補助金の一部を負担した沖縄県を相手として,「第3次命の森やんばる訴訟」(違法公金支出金返還等請求事件)を提起しました。これは,2016年に沖縄振興の名目で国が負担する一括交付金という制度を使って,少なくとも50年から60年はほとんど人の手が入っていないやんばるの森林が「耕作放棄地」であるとの誤った判断のもとに大規模に伐採され,日本一大きなどんぐりの実をつけるオキナワウラジロガシの大木や,ノグチゲラの営巣が可能なイタジイの大木も伐採されたことについて,その違法性を問う裁判です。

 

2 第3次命の森やんばる訴訟
裁判では,伐採された樹木を一本ずつ測定して樹種を特定する調査の結果や隣接する森林に自動撮影カメラの映像などを提出してきました。
しかし,昨年10月の那覇地方裁判所の判決は,伐採現場の検証(現地視察)や証人尋問を却下して,適法な支出であったと判断したため,現在控訴審が続いています。一審判決は,補助金の要件該当性について補助金交付の根拠法令を検討していないという問題や,現地の状況について証拠を踏まえずパイン畑であったなどと判断したという問題があり,控訴審で改めて主張立証を予定しています。

3 今後の展望
この第3次命の森やんばる訴訟では,第2次訴訟に引き続き,自然の権利基金からご支援をいただいています。
昨年7月,やんばる地域(沖縄県北部)の一部が世界自然遺産に登録されましたが,今後も森林伐採などで自然破壊が進む可能性があり,この裁判を通して問題提起をしていきたいと思っています。
私たちは,自然保護団体「やんばるDONぐりーず」を通して活動しています。
ヤンバルクイナの交尾の映像や,新しいポストカードの案内など,ホームページやFacebookで発信していますので,ご覧ください。
以 上

 (文・写真) 第3次命の森やんばる訴訟弁護団 弁護士 喜多自然

◆◇◆  ご支援くださり、ありがとうございました!◆◇◆

【事件報告】自然の権利基金通信90号から転載

   天ヶ瀬ダム再開発事業・公金差止め訴訟の最終報告

 

 訴訟では、国営天ヶ瀬ダム再開発事業(天再事業)の治水・治水効果の不存在、環境破壊、安全性の欠如の違法性を理由として、京都府の事業負担金支出の差止め等を求めた。15年1月提訴(京都地裁)、20年3月1審敗訴、21年5月控訴審敗訴で上告せず確定した。


1 天再事業は、天ヶ瀬ダム湖左岸からダム下流の宇治川左岸までトンネル式放流設備を設置して、ダム設備全体の放流能力を840?/秒から1,500?/秒とし、琵琶湖から淀川河口までの洪水被害防止、京都府営水道の水源確保、関電の発電量の増加を目的とし、21年度完成(予定)までに、当初事業費の約2倍の費用を要している(約600億円)。

2 原告らは、①治水効果は、トンネル式放流路設備がなくても、現存する河川施設の効率的な操作、運用によって実現できる。②ダム上流部から1,500?/秒の流量確保を前提としているが、ダム上流部にある鹿跳渓谷の地形による制約から計画流量が確保できないことから事業の有効性はない、③放流路施設には利水効果がなく、利水目的からみて必要性がない。④ダム関連施設・放流路施設は、周辺を含む地盤や地質等に照らして河川管理施設構造令に定める耐震性その他の安全性確保のための技術的基準を充足していない等の違法性を主張したが、1審、控訴審はいずれも否定し、ダムの安全性確保について正面から判断しなかった。

3 特に控訴審判決は、天ヶ瀬ダムの耐震性能照査が実施されていないこと、ダム周辺にメランジ堆積層等脆弱な地質・地層があること、ダムに必須とされている計測機器が稼働しなくなっていること等は認定した。しかるに、判決は、同構造令の原始附則2項の解釈により、天ヶ瀬ダムの計測機器の設置状況に不備があるとしても、同構造令が定める主要なダム性能規定は、天ヶ瀬ダムが「改築」(再開発事業は改築ではない)されるまでは適用されない。従って、直ちに、天ヶ瀬ダム現状について、その堤体及び基礎地盤並びに放流施設が、その安全性の欠如により、河川法に基づく河川管理施設としての機能、性状を有しないとまで認められないと判断した。

4 1950年代以降、多くのダムが建設され、すでに70年近くが経過し、一方では、今後30年以内に巨大地震が発生すると予測されている。この状況下にあって、ダム、道路等の施設の安全性については、その崩壊等の蓋然性立証をしなければ供用差止めが出来ないのか。本事例類似の施設の安全性欠如を問題とすべき案件は、全国各地に存在すると受け止めている。 

天ヶ瀬ダム再開発事業公金差止事件弁護団 弁護士藤原猛爾

◆◇◆  ご支援くださり、ありがとうございました!◆◇◆

【事件報告】自然の権利基金通信89号から転載

   上関「自然の権利」訴訟

  カンムリウミスズメ羽ばたき              カンムリウミスズメ(写真提供:上関の自然を守る会)  

 上関「自然の権利」訴訟,2021年1月21日に最高裁決定が出て幕を閉じました。2008年12月2日に提訴され,10年以上にもわたって訴訟が展開されてきました。結果は門前払いでしたが,みなさまのおかげで,この間に反対運動は前進してまいりました。
裁判途中に福島第一原子力発電所事故が発生し,原子力エネルギーが人や自然に壊滅的な打撃を与えるものであること,原子力発電所なくとも日本経済は機能していくことが証明されました。事故を契機に原子力発電に対する社会の見方も一変し,私たちは上関原子力発電所についても,計画中止までもう少しのところまで追い詰めているのだろうと思います。
さて,裁判は原発のための埋立許可は違法であるから取り消せという内容です。裁判を通じて,上関原発が立地審査に適合しないことが明らかになりました。原発からわずか4kmの場所に祝島という小さな島があります。ひとたび重大な事故が発生すれば祝島住民は逃げ場を失い助かる道がありません。このような場所は立地基準を満たさず,本来違法とされるべき場所でした。このような違法があるにもかかわらず,残念ながら裁判所はこの問題に踏み込むことなく,原告には裁判を受ける資格がないとしました。
上関「自然の権利」訴訟は人間ばかりでなく,カンムリウミスズメ,スギモク(海藻),スナメリといった動物たちも原告になりました。裁判を通じて私たちは上関の貴重な自然の価値を訴えてきました。また,豊穣の海とともに生きてきた祝島住民のみなさんの生活がいかに豊かなものであるかも訴えてきました。裁判所には届きませんでしたが,私たちの訴えは多くの人たちに届き,長期にわたる裁判であったにもかかわらず多くの人々が傍聴にこられ,私たちのニュースもマスコミやSNSを通じて全国に報じられました。
これまで上関「自然の権利」訴訟を応援していただいたみなさまに心から感謝申し上げるとともに,今後も上関の自然を守る,原発阻止に向けて弁護団一同奮闘する所存です。 

  上関「自然の権利」訴訟弁護団 弁護士 籠橋隆明

◆◇◆  ご支援くださり、ありがとうございました!◆◇◆

【事件報告】自然の権利基金通信88号から転載

亀岡駅北開発&スタジアム関連訴訟」のその後の状況

         亀岡駅北開発問題弁護団 弁護士 飯田 昭        
第1 概要
前回2019年10月に報告させていただきました表記事件は、①土地区画整理事業認可取消訴訟、②都市計画公園事業認可取消訴訟、③京都府に対する公金支出差止住民訴訟、④亀岡市に対する公金支出差止住民訴訟、の4つの裁判がすすめられてきました。
2016年8月に、都市計画公園用地での建設はアユモドキの生息に対する影響が懸念されるとした京都府環境保全専門家会議の座長提言を受けて、区画整理事業用地に変更されたため、②訴訟は目的を達したとして取下げています。

第2 区画整理事業認可取消訴訟
1 ①訴訟の中心争点は、浸水常襲地で、遊水地の役割を果たしてきた亀岡駅北側の農地を、サッカー専用スタジアムの建設に関連して区画整理事業により開発するために市街化調整区域から市街化区域に変更したことの違法性でした。都市計画の線引きでは、「溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域」(同施行令8条2号)として市街化調整区域にしてきた地域に、4メートルの盛土をすると、2013年の台風28号でも多大の浸水被害を受けた原告ら居住地の水位が高まり、水害の範囲が拡大することを国土問題研究会調査団の報告書等で立証してきました。前段としては、水害被害を受ける区域外周辺住民の原告適格が争点です。
2 京都地裁判決(2019年11月19日)は区域内地権者1名を除く地域住民 の原告適格を否定し(却下)、行政の広範な裁量を認めて区域内原告についても棄却したため、大阪高裁に控訴していました。
控訴審では、原告適格と裁量論につき、石塚武志龍谷大学法学部准教授の意見書や国土研調査団の追加意見書を提出し、区域外原告の原告適格と、降雨量が増加し水害の頻度が高まっている近時の状況においては1/10の治水安全度ではなく1/100が指標となる旨主張・立証してきました。
3 しかしながら、2020年11月19日に出された大阪高裁判決は、地裁判決の事実誤認は修正したものの、区域外原告の適格を否定し、行政庁の広範な裁量を認めるという構図は原審同様で、控訴を棄却しました。
結果は残念でしたが、新たな(水害)被害が発生していない段階で行政に警告し、水害対策の前進を促す意義はあったとの評価はできると思います(上告せず)。

第3 住民訴訟
1 京都スタジアムの建設には、京都府知事が約153億5000万の、亀岡市が約20億円の公金を支出したため、2017年8月31日に③の、同年9月20日には④の住民訴訟を提訴して併合審理されてきました(当初は差止め請求で、支出後は返還請求に変更)。
2 住民訴訟の第1の争点は、巨額の公金支出に経済的合理性がなく、地方自治法2条14項及び地方財政法4条項に反し違法であるとの点です。
府の試算は、費用便益計算(便益/費用)を約1.5としていますが、都市公園な
どの非市場財に用いる旅行費用法の基準を、プロスポーツの観戦のためのサッカー専用スタジアムに用いること自体が不適切です。仮に、旅行費用法を用いるとしても、観客動員数予測を過大評価し、他方で、交通対策費用、アユモドキ保全のための地下水対策費用や計画変更に伴う道路整備費用などの外部経済のマイナス面を全く考慮していません。そして、これらを考慮すると費用便益は大幅に1を下回り、経済的合理性がないことを、亀岡まちづくり研究会の試算や、只友景士龍谷大学政策学部教授の意見書により、詳細に主張・立証してきました。ところが、京都地裁は尋問申請を却下し、被告の反論も不要として結審して、2019年8月26日の判決に至りました。
判決は、原告側の試算を何ら検討することもなく、行政の裁量権を極めて広く認め
て、裁量の逸脱・濫用はないとしましたが、裁量権についての考え方を誤ったものであるとともに、審理不尽でもあるとして、控訴しました。
3 第2の争点は、①訴訟では原告適格の問題で俎上に載せられなかったアユモドキの生育への悪影響です。アユモドキは文化財保護法に基づく天然記念物ですが、文化庁長官の許可も環境大臣の同意も得ることなく、本件整備事業による地下水への影響により、アユモドキの生育が脅かされており、文化財の毀損として、文化材保護法125条1項(「天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない」)等に違反することを主張・立証してきました。
しかしながら、京都地裁の判決は、アユモドキの生育が脅かされていることが立証されていないとして棄却しています。この点についても、不十分なアセスメントの責任を事実上不可能な住民側の立証責任に転化しており、不当判決と言わざるを得ません。
4 控訴審では、第1の争点については、2020年春に開業したスタジアムの実績は、新型コロナ問題を措くとしても費用便益上1を大幅に下回ることが実証されたことを追加主張・立証してきました。
第2の争点については、府の委託した業者による工事中・工事後の地下水調査においても、水質を表す指標である溶存酸素量(DO値)は0.1mg(通常魚介類の生存には3mg以上必要)と異常な低数値を示し、現にアユモドキの個体数が激減しているにもかかわらず、「地下水に異常な数値が観測された場合には、スタジアム建設工事を一時中断して検討する」との承認条件も果たされず、アユモドキの生育が脅かされたこと等を追加で主張・立証してきました。
5 2021年2月2日大阪高裁判決
地裁判決の行政裁量の範囲をあまりに広範に認めた規範を是正するなど、控訴人の主張を入れたところもありましたが、争点についての事実認定と判断については、不当判決と言わざるを得ません。
第1の争点については、来客者数は不確実なものであり、(2020年は平均3千人強であったとしても)「平均1万人と見込むことが不合理であるとまでは言えない」などとして、棄却。第2の争点についても、「アユモドキの保存に影響を及ぼしたことを認めるに足りる証拠はない」などとして、棄却しました。 

 

 

【事件報告】自然の権利基金通信87号から転載

天ヶ瀬ダム再開発事業公金差止請求事件

 天ヶ瀬再開発事業の概要より

  天ヶ瀬再開発事業の概要より             


事件報告 
この訴訟は、「淀川水系河川整備計画」(2009年3月)に基づく国営天ヶ瀬ダム再開発事業(天再事業)の違法性を理由として、京都府の事業負担金支出の差止め等を求める住民訴訟です。2015年1月23日の提訴(京都地裁)依頼5年を経過しています。
1 天再事業は、天ヶ瀬ダム(1964年完成)のダム湖左岸からダム下流の宇治川左岸まで全長617mのトンネル式放流設備を設置して最大600㎥/秒を放流し、ダム設備全体としての放流能力を840㎥/秒から1,500㎥/秒とし、琵琶湖から淀川河口までの洪水被害防止、京都府営水道の水源確保、関電の発電量の増加を目的としています。事業計画は、現在までに数回変更され、当初総事業費約330億円が590億円に膨れ上がり、2018年度末完成予定が2021年に延期されていました。2019年12月26日には、事業費が約70億円増額され、総事業費は当初から倍増し660億円となりました。
2 争点となっている天再事業の違法性は以下のとおりです。
① 事業目的である治水効果は、トンネル式放流設備がなくても、現存する河川施設の効率的な操作、運用によって実現でき、事業の必要性はない。
② 事業は、ダム上流部から1,500㎥/秒という流量確保を前提としているが、ダム上流部にある鹿跳渓谷が狭小であるために計画流量が確保できず事業目的は達成できず、事業の効果は認められない。
③ 事業は、京都府下の水需要を過大に見積もっており、利水目的からみても必要性がない。
④ 新規放流設備を含む天ヶ瀬ダム関連施設の周辺地盤には、活断層ないし断層が存在し、耐震性その他の河川施設の安全性確保のための技術的基準を充足していない。
⑤ 事業は、琵琶湖、瀬田川・宇治川・淀川の自然生態系への悪影響、自然・歴史的・文化的景観等の破壊をもたらす。
3 これら各争点について、原告側から専門家による証人尋問を申請しておりましたが、第1審は採用しないまま結審し、2020年6月25日、京都地裁は判決を言い渡しました。
第1審判決は、上記争点についての判断基準を、不当にも、八ッ場ダム訴訟と同様に一日校長事件判決を参考にした厳格な違法性判断基準(重大かつ明白な違法ないし瑕疵)としたため、各争点につき実質的な審理は全くなされておりません。その理由中で、国営事業である天再事業では、京都府には国の通知を尊重して負担金を支払う義務があるとしており、京都府には財務会計上の審査をする権限がないというような地方自治の本旨に反する判断であるといえます。
原告らは、第1審判決を不服として控訴を申し立てております。控訴審の期日は現時点では指定されていません。
控訴審では、上記判断基準の不当性、各争点についての補充主張を行っていく予定をしております。各争点について、専門家による証人尋問を含め,実質的な審理がなされるべきであると主張して参ります。


(文・写真)天ヶ瀬ダム再開発事業公金差止事件弁護団

          弁護士 喜多啓公(大阪弁護士会所属)

【事件報告】自然の権利基金通信86号から転載

上関「自然の権利」訴訟、最高裁へ

 カンムリウミスズメ(写真提供:泊寿彦様)

  カンムリウミスズメ(写真提供:泊寿彦様)              


事件報告 
関西電力(株)は原子力発電所を新設するために山口県熊毛郡上関町にある田ノ浦という海岸を埋め立てる計画を進めています。海岸を埋め立てるためには山口県知事が埋立免許を与えなければなりませんが、平成20年10月22日に埋立免許を与えてしまいました。今回の裁判はこの埋立免許が違法であるとして免許の取り消しを求めて裁判を進めてきました。残念ながら第1審、第2審とも却下判決がなされ原告の請求を退けられました。しかし、原告団は原発計画撤回まで諦めずに裁判を進めていくことが改めて確認され、上告となりました。
瀬戸内海は数多く埋立が進められたり、護岸整備が行われたため、自然海岸の大部分が失われてしまいました。原発予定地田ノ浦は、瀬戸内海の砂浜の特徴が残された、数少ない自然海岸です。小型クジラであるスナメリが生息するほか、世界的にも希少なカンムリウミスズメなど豊かな生態系が広がっています。
原発予定地からわずか4kmというに祝島(いわいしま)という島があるのですが、漁業も盛んです。人は生態系の一部として自然の恵みを得て、豊かな文化を作ってきました。今回の裁判はスナメリや、カンムリウミスズメが原告になっていたほか、祝島島民、全国のこころある人々が原告となってきました。
裁判は負けてしまいましたが、まだ最高裁があります。また、裁判を進める中で多くの人々が反対運動を支援し、メディアにも報道されてきました。原発反対運動は裁判ばかりではありません。自然を愛し、原子力に頼らない生活を求める人たちが、いろいろ形で上関原発に反対しています。原告や弁護団も上関原発計画が白紙撤回されるまで戦い続けるつもりです。どうかご支援よろしくおねがいいたします。

      (文) 上関「自然の権利」訴訟弁護団弁護士籠橋隆明

【事件報告】自然の権利基金通信85号から転載

沖縄のジュゴンは、いま‥

 非暴力抗議も続けられている

             カヌーでの非暴力抗議も続けられている             


ジュゴン訴訟の現場である辺野古新基地建設は、今どのような状況だろうか?」そう心配している方も多いと思う。私は普天間飛行場の移設先として辺野古・大浦湾への基地建設が明らかになった1996年頃よりこの問題と関わった。1995年に提訴された「奄美自然の権利訴訟」の原告だった私は、現在、辺野古新基地建設が進む沖縄県名護市で暮らしている。現場より最新情報をレポートしたい。
まず最初に理っておきたいのは、辺野古新基地建設が普天間飛行場の「移設」では決して無いということ。政府は盛んに「世界一危険な普天間飛行場の危険性除去のための“移設”」と宣伝するが、「やんばる」と呼ばれる沖縄島北部へ「最新鋭の攻撃型米軍基地」を建設しているだけのことだ。その実態は、ほぼ同時期に着工した「やんばる」の在沖米軍基地内(伊江村伊江島及び東村高江)へ新たなオスプレイヘリパッド整備を終え「在沖米軍基地機能を強化し、生物多様性の顕著な沖縄島北部“やんばる地域”へ集約させた」いうことなのだ。
辺野古新基地建設の滑走路は普天間飛行場と比較し1,000メートルも短い。そのため米軍は普天間飛行場を返還する条件として、「辺野古の滑走路以外に別の長い滑走路もよこせ」と言っている。これは2016年当時の防衛大臣稲田朋美が認めた事実であり、2018年9月、沖縄県が辺野古新基地建設の埋め立て承認を撤回した理由のひとつにもなっている。? また辺野古新基地には普天間飛行場には無い機能も付加されている。それは強襲揚陸艦も接岸可能な「軍港」と滑走路内の「弾薬装填場」だ。2017年に放映されたNHKスクープドキュメント『沖縄と核』では、米軍統治下の沖縄へ 1,300発もの核兵器が持ち込まれていた事実が明らかにされた。秘密裏に日本国内へ持ち込まれていた核爆弾が保管されていたというキャンプシュワブ(辺野古)弾薬庫も、新基地滑走路と共に現在再整備中である。? 2019年3月、沖縄防衛局の調査で沖縄島北部沿岸に3頭生息していることが明らかになっていたジュゴンのうち、1頭(個体B・雌)が今帰仁村の海岸へ死体で漂着した。他の2頭(個体A、C)は辺野古新基地建設着工後に行方不明のままだった。2015年夏ごろより行方不明になったとされる幼いジュゴン(個体C)は、死体で漂着した個体Bと行動を共にしており親子だと考えられている。また個体Aが2018年秋頃まで頻繁に目撃されていた嘉陽海岸は、工事が進む辺野古・大浦湾のすぐ近く。沖縄防衛局が本体工事に着手した2016年12月より抗議船の船長として海上工事現場を見てきた私は、この工事が「ジュゴンの行方不明とは無関係」という沖縄防衛局の発表を断じて認めるわけにはいかない。護岸の建設中は2~3分毎に、ガラガラと轟音をたてながら砕石が投下された。海の中は空気中より4倍も音が早く伝わる。音に敏感なジュゴンが、これまでに聞いたこともない工事の騒音に怯える姿を想像して欲しい。刻々と壊されゆく海へ出るたび胸が張り裂けそうになる。? そしていま護岸で囲われた沖縄島最大規模の海草藻場へ赤土土砂が投入され、沖縄県民投票の結果を無視し埋め立て工事は強行されている。絶滅の危機にあるジュゴンは絶滅の危機にある海草を食べ、その命をギリギリのところで繋いできた。もう私たちに猶予はないのだ。辺野古・大浦湾の生物多様性を守ることでしか、この豊かな海を守ることでしか、ジュゴンを守れないのだから。

                 (文・写真・資料) 中原貴久子

【事件報告】「奄美嘉徳海岸ウミガメ訴訟」クラウドファンディング第二弾

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専門家への調査費用を賄うためのクラウドファンディング第二弾が始まりました。

https://readyfor.jp/projects/save-amami-katoku-beach-2

全国からの温かいご支援を背に、これまで様々な活動を継続してきました。その結果、私たちは、嘉徳浜を守るための住民訴訟を現在まで継続することができ、工事も中断され、嘉徳の自然のままの姿が現在も残されています。

工事の中断は、ウミガメの産卵がをきっかけとするものですが、孵化時期の過ぎた今もなお工事は再開されていません。これも、全国の皆さまからの応援を背に、私たちが様々な活動を継続することができたことによるものだと思います。本当にありがとうございます。

しかし,裁判は現在も継続されており、行政は工事の撤回を決めたわけではありません。私たちは、裁判の手続の中で、現在計画されているようなコンクリート製護岸は必要ないことを明らかにしていく必要があります。

そこで私たちは、県側が主張するように自然を壊してまで巨大なコンクリート製の護岸を作るしか方法はないのか、現在計画されているような護岸を作ることはかえって有害で住民の安全を脅かすのではないか、海岸工学の専門的な見地から検討したいと考えてきました。

この度、海岸工学の見地から専門的かつ詳細な調査と分析が可能な日本有数の専門機関に、嘉徳浜の状態や経年変化に関する調査を依頼できる準備が整いました。

前回のクラウドファンディングの費用は、本訴訟を継続するために大切に使用させていただいています。しかし、専門機関に依頼をして、しっかりとした調査をおこなうためには、多額の費用が掛かり、私たちの概算でも追加で250万円以上が必要となる見込みです。

そこで、応援していただける皆さまと一緒に、この取り組みを盛り上げ、専門機関による調査の実施を実現し、現在の計画の再検討を求めていくことで、嘉徳の姿を次の世代に受け継いでいきたいと思います。どうぞご支援をよろしくおねがいいたします。                          奄美嘉徳浜訴訟弁護団

【事件報告】2019年10月1日号より転載

「奄美嘉徳海岸ウミガメ訴訟」 現地進行協議

 2019年8月30日、奄美嘉徳浜ウミガメ事件の現地進行協議期日(裁判官が実際に現地を訪れ、確認するための期日)が実施されました。
弁護団では前日29日に、当日の進行を確認するため入念にリハーサルを行いました。私は弁護団に途中から加わったため、嘉徳浜を見るのはこの時が初めてでしたが、嘉徳浜は「ジュラシック・ビーチ」の名に相応しく、手つかずの自然が残る美しい秘境でした。日本有数のウミガメの産卵地であるということや、絶滅危惧種に指定されるオサガメが上陸し産卵した日本でただ一つの浜であるということも納得できました。また、山頂から見る全景は格別で、嘉徳浜の背後に鎮座する深い森、その森から溢れ嘉徳浜を割って緩やかに流れていく川の水の流れ、嘉徳浜へ打ち寄せる白波を見ていると、太古の昔からの自然の営みに畏れを感じるとともに、特別な場所へ導かれたという感覚を覚えました。

 

写真左【山頂からの全景】 写真右【嘉徳浜の基本構造についての説明】

  県が防災のため設置しようとしている護岸は、総延長180メートル、高さは6.5メートルという巨大なコンクリート製の構造物です。本件護岸工事により、大量の砂が掘削され、一方では護岸の背後に大量の砂や土を投入することになり、現状の砂浜の状況は激変することになります。
今回の現地進行協議期日では、鹿児島地裁から合議体の裁判官と書記官、鹿児島県職員及び県の代理人、原告と私たち弁護団、地元の方々や報道各社で約40名~50名が嘉徳浜へ集合しました。その上で、弁護団から嘉徳浜の基本構造について説明することから期日を開始しました。嘉徳浜の基本構造とは、嘉徳浜の背後にある森の中から流れてくる嘉徳川が嘉徳浜に流れ込み陸生の砂が運ばれること、その砂の堆積により海中にサンドバーと呼ばれる砂が生じること、そのサンドバーが波のエネルギーを上手く減退させることです。反対に海中にサンドバーが形成されない状態では、波はエネルギーを維持したまま嘉徳浜へ打ち寄せることになり、砂浜の砂も沖へ持っていかれるため台風などの際に浸食が生じやすくなります。現在は砂浜が回復しサンドバーの形成により遠浅の状態にあることを示すため、原告や現地のサーファーが海中に入り沖まで歩いて行って見せるというデモンストレーションも行いました。いかに遠浅の状態が維持されているかを裁判官3名に確認してもらうことができたと思います。加えて、アダンの木を見せながら、アダンが防砂防風効果を持ち、天然の護岸としての役割を担えることを説明しました。続いて、県からは、2014年の台風では墓地の際まで波が上がってきたことと、本件護岸の説明が行われました。その後、弁護団からは、本件護岸の規模の巨大さ、現在嘉徳浜には分かっているだけでも8カ所のウミガメが産卵しており、本件護岸がウミガメの産卵場所の上に設置されようとしていることを説明しました。最後は、嘉徳の全景を見渡せる山頂へ移動し、そこで期日は終了となりました。2時間半に亘る期日において、裁判官3名には、嘉徳の素晴らしさとそこへ設置されようとする護岸の具体的イメージを持っていただいたと思います。
原告の一人が、「ここに護岸が出来てしまえば嘉徳はただの限界集落になる」と仰いました。嘉徳は、空港から車で2時間以上もかかる場所です。見るべき自然がなくなればここを訪れる人はいなくなるでしょう。悠久の昔から形成され育まれてきた場所を破壊するのはいとも容易く一瞬です。護岸が出来れば浜は二度と元へは戻りません。前世代から預かった大切な自然を将来世代へ手渡すことは私たちの使命です。これからの裁判や運動を通じて、美しい嘉徳を守ることが出来るように様々な可能性を探り、力を尽くしたいと思います。

      文 奄美嘉徳浜ウミガメ訴訟弁護団 弁護士 山本美愛 

 

写真左【現地のサーファーによるデモンストレーション】

写真右【裁判官に予定されている護岸の規模を説明している様子】

     写真提供 奄美嘉徳浜ウミガメ訴訟弁護団 弁護士渡部貴志 

 

【事件報告】2019年6月25日号より転載

 馬毛島裁判の行方

 馬毛島をめぐる自然保護訴訟は、今、大きな局面を迎えています。タストンエアポート社を被告とした漁業損害の賠償請求訴訟は、6月5日に鹿児島地方裁判所で原告漁師3名の本人尋問が行われる予定で、結審も近いです。

もう一つ、鹿児島県を被告とした、森林違法開発の停止と復旧をタストンエアポート社に命じることを義務付ける、行政訴訟が続いています。
こちらの裁判は、昨年8月に、第1審の鹿児島地裁が、漁師の原告適格を認めず却下判決を下しましたが、今年5月29日、福岡高裁宮崎支部も控訴棄却して原判決を追認してしまいました。理由は、森林法は「個別的利益」を保護していないからだそうです。
行政事件訴訟法が、2004年の法改正で義務付け訴訟という訴訟類型を新設して、市民に行政のチェック機能を果たさせようと試みているのに、当の行政だけでなく司法までが、市民の権利を狭めるのに熱心なのは嘆かわしい限りです。1審2審判決ともに、この行訴法改正という、それまでの法解釈や判例にも影響を及ぼしうる大きな契機について、何の言及もありませんでした。この点については、桑原勇進上智大教授(行政法)の詳細な意見書を証拠提出しておりました。その中で、森林法が個人の財産権を保護していないとする平成13年の最高裁判決の問題点と射程距離、同判決はその後の行政訴訟法の改正を契機に、原告適格の要件を緩和する方向で変更されるべきであること等が説得的に論じられています。桑原意見書の立論に対抗することは並の裁判官にとっては至難の業だろうと見ておりましたが、全く何の言及も無く、見事に無視されました。「理由不備」の極みですが、裁判官としては無視する以外に方法が無かったのかも知れません。
想定内のことではありましたから、最高裁に上告する予定です。

ところで、「馬毛島買収問題」が、全国紙でも取り上げられるなど、このところ世間の耳目を集めています。防衛省が、FCLP訓練用として米軍に提供するための買収です。
沖縄の負担軽減になるから賛成だ、という池澤夏樹氏の論考を「朝日」が取り上げたのには、驚きました。馬毛島に軍事基地が出来たら、辺野古移設は無くなるとでも思っているのでしょうか。実際は、現在FCLP訓練を行っている硫黄島が、岩国から遠すぎるから、燃料費のかからない馬毛島で訓練したいというのが真相で、馬毛島と沖縄基地問題とは何の関係もありません。そうかと言って、硫黄島が日本に戻ってくる訳でもないでしょう。要は、米軍基地がまた一つ増え、艦載機のタッチアンドゴーの轟音に悩まされる市民がまた数万人増えるという結果に終わるだけなのです。
幸か不幸か、馬毛島の大半を所有しているタストンエアポート社と防衛省との間で値段の折り合いが付かないらしく、交渉が暗礁に乗り上げているようです。
歴史をたどれば、馬毛島はかつては西之表市の所有地、今でも学校跡地が市の所有のままに残されています。西之表市が市民と知恵を出し合って、平和で自然豊かな島に復元させる方法を考えて欲しいと願います。
文 馬毛島訴訟弁護団 弁護士 菅野庄一       

【事件報告】2019年6月25日号より転載

 天ヶ瀬ダム再開発事業・公金差止訴訟

 訴訟は、「淀川水系河川整備計画」(09年3月)に基づく国営天ヶ瀬ダム再開発事業(天再事業)の違法性を理由として、京都府の事業負担金支出の差止め等を求める住民訴訟です。15年1月23日の提訴(京都地裁)以来4年を経過しています。
1 天再事業は、天ヶ瀬ダム(1964年完成)のダム湖左岸からダム下流の宇治川左岸まで全長617mのトンネル式放流設備を設置して最大600㎡/秒を放流し、ダム設備全体としての放流能力を840㎡/秒から1,500㎡/秒とし、琵琶湖から淀川河口までの洪水被害防止、京都府営水道の水源確保、関電の発電量の増加を目的としています。事業計画は、現在までに数回変更され、当初総事業費約430億円が590億円に膨れ上がり、2018年度末完成予定が2021年に延期されています。
2 争点となる天再事業の違法性は以下のとおりです。
①  事業目的である治水効果は、トンネル式放流設備がなくても、現存する河川施設の効率的な操作、運用によって実現でき、事業の必要性はない。
②  事業は、ダム上流部から1,500㎡/秒という流量確保を前提としているが、ダム上流部にある鹿跳渓谷が狭小であるために計画流量が確保できず事業目的は達成できず、事業の効果は認められない。
③  事業は、京都府下の水需要を過大に見積もっており、利水目的からみても必要性がない。
④  新規放流設備を含む天ヶ瀬ダム関連施設の周辺地盤には、活断層ないし断層が存在すし、耐震性その他の河川施設の安全性確保のための技術的基準を充足していない。
⑤  事業は、琵琶湖、瀬田川・宇治川・淀川の自然生態系への悪影響、自然・歴史的・文化的景観等の破壊をもたらす。
3 現在、上記争点について主張整理をほぼ終え、事業内容・目的について国(国交省)に対する調査嘱託採否が問題となっていますが、本年後半には事業の違法性に関する証人尋問実施を目指しています。いまのところ治水・利水に関しては嶋津暉之氏、ダムの安全性確保の不備等については奥西一夫氏を証人として予定しています。
文 天ヶ瀬ダム再開発事業・公金差止訴訟弁護団 弁護士 藤原猛爾

上写真【鹿跳渓谷(優れた景観を有する渓谷)】 

写真提供  天ヶ瀬ダム再開発事業・公金差止訴訟弁護団 弁護士 藤原猛爾                   

 

【事件報告】~新たな支援先です~

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「奄美嘉徳海岸ウミガメ訴訟」クラウドファンディング

「自然の権利基金」では奄美嘉徳浜訴訟を支援するためクラウドファンディングを始め、第一次目標額150万円を達成しました。ありがとうございます。弁護団の感謝と決意を示した声明を掲載します。なお、嘉徳浜訴訟は引き続きクラウドファンディングで寄付を集めています。
→https://readyfor.jp/projects/save-amami-katoku-beach

◆ 弁護団声明 ◆

奄美「嘉徳浜」訴訟弁護団
クラウドファンディング第一次目標達成する感謝と決意

 私は鹿児島県奄美大島嘉徳浜を守る住民訴訟に取り組んでいます。こうした取り組みは我が国においては資金不足から十分な活動を進められないということがありましたが,このたびクラウドファンディングによって,全国各地から多くの支援をいただき,クラウドファンディングが成功したのでその感謝と決意をあらためて申し上げます。クラウドファンディングは現在300万円を目標にさらに展開しており,引き続きのご支援をお願い申し上げます。

 嘉徳浜は嘉徳川河口に広がるポケットビーチです。豊富な淡水のため亜熱帯の奄美大島では珍しく川砂でできあがった海岸です。嘉徳川の豊かな水量は豊富な砂を供給し,広大な砂浜を形成しました。嘉徳浜は奄美でも極めて数少なくなった人工物のない自然海岸です。嘉徳川上流から嘉徳浜にかけてほとんど人工物が無く,太古の世界を思わせる嘉徳浜は川と一帯となって豊かで恵みの多い美しい生態系をなしています。

 この嘉徳の砂浜が、2014年10月の台風18・19号の波浪により約20m侵食され、浜崖 はまがけ(砂浜が浸食されることでできる崖)が集落と海の間にある墓地に迫ってきました。そこで鹿児島県は護岸工事を進めることにし,当初は長さ約530m,海岸全体をコンクリート護岸で覆うという計画でしたが,嘉徳浜を守れとの声があがり,現在では180mコンクリート護岸を砂で覆い、アダンなどの海浜植物の植栽を施すという計画に変更されています。

 しかし,180mもの巨大な構造物が砂浜の中心部に据え置かれることは嘉徳浜にとって致命的な打撃を与えます。なぜ,防災対策がコンクリート構造物でなければならないのでしょうか。豊かな砂浜は十分な防災効果があるはずです。現に嘉徳浜の砂浜はわからないほど古くから嘉徳の集落を守ってきました。台風により浸食された砂浜でしたが,砂浜は復活すつしています。嘉徳浜の自然の回復力を手助けし,豊かな砂浜を復活させる方法があり,日本や世界各地でその手法が試みら,成果を上げています。私たちは安易いコンクリート構造物に頼ることはもう止めなければなりません。「人も自然もともに守れ」というのが私たちの考えです。

 私たち嘉徳浜弁護団は訴訟を通じて,人も自然もともに守られるすべがあることを明らかにするつもりです。また,訴訟ばかりでなく様々なチャンネルを通じて鹿児島県や地域の人々,日本や世界の人々に嘉徳浜の価値をわかってもらい,嘉徳浜を守り,人が自然の中で豊かさを感じられる世界を実現したいと思っています。

 私たちはこのたびクラウドファンディングを始め多くの方々のご支援をいただいています。マスメディアに登場したわけでもないこの問題に,草の根のネットワークを通じて人々が集い,寄付金という形で意志が示されたことは意義深いものがあります。私たちはこの貴重な資金を必ずや嘉徳浜を守るという意味ある形にしてまいる所存です。どうか引き続きのご支援をお願い申し上げます。

 2019年4月9日
奄美「嘉徳浜」訴訟弁護団一同
代表 弁護士 籠橋隆明           

 

【事件報告】~新たな支援先です~

「奄美嘉徳海岸ウミガメ事件」

 2019年2月1日,奄美と沖縄について2020年の世界自然遺産登録に向けた再推薦の手続がなされました。国は,「奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島」という範囲で世界自然遺産登録を目指しています。

  世界自然遺産登録に向けた動きもあり,ここ数年で,奄美が取り上げられることが増え,ました。奄美が注目されることは,それ自体素晴らしいことですし,注目されるだけの魅力があるからだと思います。


しかしながら,一方で,世界自然遺産登録のための準備として聞かれることは,観光客の増加に伴う観光施設の整備,外国人観光客の受入れのための準備といったことが多く,どのようにして今ある自然をそのままの形で残していくかという議論はあまり聞かれません。多くの人が注目しているのは世界自然遺産登録の観光産業に繋がるという側面で,自然を守ることそれ自体ではないのではないかと感じています。本来,世界自然遺産登録は,今ある自然を価値あるものとして守り遺すためにあるのですから,例えば,今残されている景観や自然の砂浜やサンゴなどをどのようにして守るのか議論をして必要な施策を講じる必要があるのではないでしょうか。


奄美大島の南部に嘉徳という場所があります。17世帯の住民が住む海辺の小さな集落なのですが,嘉徳海岸という手付かずの自然が残された広大な砂浜があります。嘉徳海岸には絶滅危惧種とされる多くの希少生物が生息しており,ウミガメの産卵の場所にもなっています。2002年にはオサガメという巨大なカメが産卵のために上陸した記録も残されています。日本でオサガメが産卵をした記録が残されているのは唯一,嘉徳海岸のみです。
今,この場所に,コンクリートの護岸を作る工事が計画されています。計画されている場所はまさにウミガメの産卵が頻繁にみられる場所で,オサガメの産卵もこの場所で記録されています。


2019年1月31日,私たち弁護団は,鹿児島県庁に住民監査請求の手続をしました。これは,護岸工事のための公金の支出を差し止めるための手続です。
県と町が護岸工事を進めようとしている理由は,数年前の台風で砂浜が浸食され集落のお墓のすぐ近くまで海水が来たたためで,砂浜の浸食を食い止めるために護岸が必要であるとしています。しかし,その後の経過を観察すると,浸食を食い止めるために設置したサンドバッグが砂でほとんど埋もれるくらい砂は戻ってきています。そもそも海岸の砂というものは,海流によって移動しており一時的に増えたり減ったりすることを繰り返すものです。奄美では,昨年の台風24号で屋根が飛ばされる家も多く見られ大きな被害が発生しましたが,嘉徳の海岸は台風24号によっても浸食されませんでした。つまり,たしかに数年前の台風では砂浜が浸食されたのは事実ですが,その後の経過を観察すれば砂は戻ってきており,少なくとも,今すぐにコンクリートの護岸を作る必要性があるとは思えません。
コンクリートの護岸は,一旦作れば,元の砂浜に戻すことは絶対にできない恒久的かつ不可逆的なものです。今ある問題に対して護岸を作るという答えをだすのは簡単ですが,失われた自然は二度と戻ってきません。
私たちも,浸食対策を検討することや推移を観察することを否定しているわけではありません。浸食対策は砂の回復の推移を慎重に観察した上で,アダンの木の植栽などを含めた生態系を生かした防災対策,Eco-DRR(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)で行うべきです。Eco-DRRは環境省も推奨している自然の生態系を生かした防災対策です。


現在,世界自然遺産登録に向けて準備が進められていますが,一方で,世界自然遺産登録の範囲から漏れた地域では自然が壊されていくところを見ています。世界自然遺産登録になり奄美が有名になり観光客が来ればいいというものではないはずです。
将来を選択するのは,今の時代を生きている一人一人ですから,その一人一人が次世代への責任を負っているはずです。私たち弁護団は,今回の住民監査請求,そして今後の手続を通じて,奄美が未来に何を残そうとしているのかを問いたいと思っています。

護岸建設予定地の奄美嘉徳海岸 護岸建設予定地 奄美嘉徳海岸

         

(文・写真) 奄美嘉徳海岸ウミガメ事件弁護団  弁護士 和田知彦

【事件報告】2018年6月25日号より転載

「亀岡駅北開発・スタジアム建設問題の現状報告」

亀岡駅北開発・スタジアム建設問題訴訟弁護団 弁護士 飯田昭

   1 亀岡駅北開発~二つの裁判
亀岡駅の北側は、桂川(保津川)が下流の「保津川下り」で有名な保津峡で極端に狭くなるため、大雨・台風時には川が逆流することから、堤防の決壊を防ぐために霞堤を設けて水をあふれさせ、周辺の農地に遊水地としての機能をもたせることにより、水害の軽減を図ってきました。このため、一帯は都市計画上、市街化調整区域とされてきました。
ところが、サッカー専用スタジアム(京都スタジアム)建設のための、都市計画公園事業と土地区画整理事業が認可されたため、2013(平成25)年の台風18号により浸水被害を受けた周辺住民ら約150名が原告となって、これらの事業をストップさせるために、2014(平成26)年12月4日に土地区画整理組合設立認可取消請求訴訟(以下、「区画整理取消訴訟」)を提訴しました。また、都市計画公園事業については、2015(平成27)年1月13日に都市計画公園事業認可取消請求訴訟(以下、「都市計画公園取消訴訟」)を提訴しました。9名の弁護団で支援しています。

2 計画地の変更
都市計画公園用地でのスタジアム建設についてはWWFを初め天然記念物アユモドキへの影響を懸念する声が国内・外からよせられたため、環境保全専門家会議の提言を受けて、アユモドキへの影響を軽減するためスタジアムの建設場所を都市計画公園用地から土地区画整理事業用地に変更され(2016年8月)、京都府及び亀岡市は、地権者からスタジアム建設予定地を購入しました(下図参照)。
このため、二つの裁判のうち、都市計画公園取消訴訟については進行を保留し、区画整取消訴訟について、引き続き進行することになりました。
しかしながら、区画整理事業用地に大規模スタジアムを建設するにあたってのアユモド
キへの環境影響評価はなされておらず、アユモドキに対する懸念が払拭されたわけではありません。
3 最大の争点~水害の危険の増大
区画整理取消訴訟の最大の争点は、下流に保津峡の狭窄部があることから、洪水が逆流して氾濫する浸水常襲地であり、長らく遊水地として機能していた田畑で、都市計画の線引きでは、「溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域」(同施行令8条2号)としての市街化調整区域であったのを、市街化区域に変更して事業認可を受けたことの違法性です。
具体的には、市は当面計画(10年に1度の洪水確率)を達成し、今後、暫定計画(1/30確率)、基本計画(1/100確率)の達成を目指していくので、開発は許されるとしていますが、現に変更後に2013年台風18号による大水害が起きており、下流の保津峡の狭窄部を拡幅することは、景観的にも財政的にも不可能です。このため、1/100確率はおろか、1/30確率も達成不能なところに、遊水池(霞堤)を埋め立てて開発することは、災害の危険を増大させ、裁量権の逸脱・濫用であると主張しています。
既に、国土問題研究会調査団の意見書(三次)、今本博健元京都大学防災研究所長(元淀川流域委員会委員長)の意見書、多数の陳述書を提出し、現地検証を求めているところです。

4 住民訴訟(京都府、亀岡市)の提訴
昨(2017)年8月31日には京都府知事に対し、147億円(用地所得 13.7億円、設計費3.3億円、建設工事費140億)の公金支出差止めを求めて、住民訴訟を提訴しました。
また、9月20日には、亀岡市長に対しても、用地取得費20億円の公金支出差止めを求めて、住民訴訟を提訴しました。
住民訴訟では、費用便益の試算が誤りであり、京都サンガがJ2からJ3への転落の危機にある中で、1万人の観客動員数予測など、亀岡市の場所的制約からすると、明らかに過剰な便益を見積もっており、将来に禍根を残す負の遺産となることを主張しています。
また、天然記念物アユモドキの生育への悪影響は、文化財の毀損として、文化財保護法に違反する行為であり、財政支出は財務会計上違法なものと主張しています。

5 現状と展望
残念ながら、今春からスタジアム建設のための掘削工事が着工されています。
京都府は、環境保全専門家会議の了承を得ていることを錦の御旗にしていますが、専門家会議には土木や地下水解析の専門家は入っていません。しかも、最近入手できた実施設計図書によると、専門家会議への説明時点と基礎の構造や杭の長さが地下水への浸食を起こす規模で相違しており、「アユモドキへの影響は軽微である」とする根拠が、審理不尽であることが明らかになりつつあります。
この問題は、今春の京都府知事選でも争点の一つになりましたが、出口調査でも、亀岡でのスタジアム建設には大半が懐疑的です(添附記事参照)。
裁判は正念場を迎えますので、引き続きご支援をお願い申し上げます。

          

【事件報告】2018年2月25日号より転載

「白保の海とコウモリを守る裁判が終了しました」

    新石垣空港訴訟弁護団 弁護士 足 立 修 一
1 海上案は阻止したが
新石垣空港をめぐる争いは、1979年代に白保の海を埋立てて空港を設置するる案が沖縄県から出て、その後、地元の運動とそれに呼応した反対運動の高まりにより、1989年に海上案は撤回され、カラ岳東案となりました。この時点では、海上案を阻止し、勝利したと多くの人々は感じたと思います。
ところが、その後、白保の海のすぐとなりのカラ岳のすぐ南で新空港の建設が進められることになりました。
2 一連の訴訟は設置許可取消請求訴訟からはじまった
2005年12月設置許可が出されたため、その許可処分に対して2006年6月、一坪共有地主などが中心となって、白保の海(アオサンゴ)と絶滅危惧種のコウモリ類を守るために設置許可取消訴訟を東京地裁で提訴しました。その後、土地収用の手続きが始まり、2009年2月、事業認定の取消訴訟を提訴しました(東京地裁)。また、2010年9月、収用裁決の取消訴訟を提訴しました(那覇地裁)。これらの訴訟の継続中に、アオサンゴ、絶滅危惧種のコウモリ類のほか、2万年前の人骨が発掘される(白保竿根田原遺跡)など、新空港の場所選定をめぐる問題がいろいろと出てきたものの建設は止まらず、2013年3月、新空港は開港してしまいました。しかし、その後も従前の3つの訴訟に加え、開港につながる完成検査合格処分取消訴訟を提訴するなど、諦めずに訴訟を継続しました。
3 裁判所の判断は
これらの裁判の中で、設置許可訴訟では、環境影響評価法の下での環境影響の意義を問う裁判として展開し、石垣島の現地での進行協議(1泊2日)を実現させることができたものの、1審判決は全面敗訴でした(2011年6月9日)。それでも、二段階(設置許可時、完成時)の審査があるから、設置許可の段階では、大まかな計画が基準に適合するかだけでよく、実際の地盤強度があるかは、合格処分の段階で問題にすればよいという判断が示されました。これによれば、二段階目(完成時)でも闘えると思いました。しかし、その後の展開も、険しいものでした。 その後も、事業認定取消訴訟、一坪共有地の土地収用をめぐる訴訟を争い、2013年、新石垣空港が開港されても裁判を継続しました。2015年1月、最高裁の棄却決定により、許可は適法とされ終了しました。環境影響評価をめぐる裁判を続ける中で、「開発と環境の問題」は、「開発第一、環境第二でよい」というのが、この国のありようであることを思い知らされました。
4 裁判の意義
また、空港の完成後の合格検査についても合格処分を争いましたが、2017年6月16日の事業認定取消訴訟で最高裁の棄却決定がなされ全ての裁判で主文では敗訴に終わりました。しかし、白保の海を守る裁判を提訴し、最後まで闘い続けることができたのは、「八重山・白保の海を守る会」の活動によるところが大きく、敬服しています。「守る会」の地道な活動のおかげで、アオサンゴだけでなく、絶滅危惧種のコウモリ類の存在をカラ・カルスト学術調査により知らせることができ、また、滑走路の下の地盤の強度に問題があることを指摘でき、人骨発見の意義を主張していくこともできました。また、事業認定取消訴訟の控訴審判決では、理由中では「地下水流が本件起業地の地盤に与える影響について万全の対策をとるためには今後も空港用地の状態を注意深く観察し、適宜の調査及び対策を講じる必要がある」との判断を引き出し、陥没の危険性を認めさせることができました。その意味で、今後も新石垣空港の運用状況を監視していく必要があると思います。
現在、新空港開港を受け、リゾートホテルの建設が進もうとしている状況が生まれています。石垣島の自然が今後も永続していけるか、これからも目を離せないと感じています。

          

【事件報告】2018年2月25日号より転載

第2次泡瀬干潟埋立公金支出差止請求事件の終結にあたって
泡瀬干潟訴訟弁護団  弁護士 原田彰好

1、泡瀬干潟は沖縄市の前面に広がる沖縄最大の干潟で、豊かで貴重な生態系を有しています。国、沖縄県、沖縄市は協同して2002年から泡瀬干潟と浅海域186.5haの埋立工事を開始しました。この事業は、①リゾート開発により観光客を増加させ地域経済を活性化させる、②埋立海域を泡瀬干潟に近接する「特別自由貿易地域」の泊地・航路の浚渫土砂の処分場とするなどが目的です。
住民は県と市を被告として05年「第1次泡瀬干潟埋立公金支出差止請求住民訴訟」を提訴し、08年一審判決、09年控訴審判決でいずれも、埋立工事の続行は違法と判決し、埋立工事は中止されました。
2、しかし、国、県、市はその後に新たな「土地利用計画」を策定し、11年7月知事による埋立事業変更許可を得て埋立工事を再開しました。
変更した計画は、前記事業目的①、②はほぼ変わらず、埋立区域を約96haと縮少し、競技場や人工ビーチ、宿泊施設等を誘致して、スポーツ関係者や観光客、地元住民年間計415万人の需要を見込むというものです。
住民原告は11年「第2次訴訟」を提起しましたが、15年一審判決(請求棄却)、16年控訴審判決(住民側の控訴棄却)、17年10月上告審決定(上告棄却等)といういずれも不当な判決・決定により住民原告側の敗訴が確定しました。
3、これら一連の訴訟を通じての私の感想は以下のようなものです。
(1)第1次訴訟では裁判所は埋立事業の策定過程や計画の内容に踏み込んで、その適法性に関してある程度積極的に判断する姿勢を示しました。当初の埋立免許については違法とは認定しませんでしたが、例えばアセス手続などでは「不十分な点が散見される」などの記述をしています。
これに対し、第2次の各判決は、広い行政裁量を認め、知事等の判断が「著しく妥当性を欠く」場合にのみ違法となるなどとして、本件事業の策定過程や計画の内容に踏み込んでは判断しない態度に終始し、形式的・表面的な判断により、一応の資料等に基づいて事業計画が立案されているなどとして、知事らの裁量権の逸脱・濫用は認められないとしました。
しかし、例えば津波について言えば、本件埋立地に県防災計画での最大遡上高の予測値の津波が襲来した場合本件埋立地は完全に水没し、他方で本件事業の需要予測では1日あたり平均約1万1370人が埋立地に滞在しており、これら滞在者が最大地震津波の最中に安全に避難できる保障はありません。第2次訴訟では裁判所は司法審査の職責を果たしているとは言えません。
(2)この訴訟を通じて、研究者や環境NGOからの研究成果の提供を受けて、住民原告側の主張の骨格とし、泡瀬干潟の豊かで貴重な生態系を裁判所にも訴えてきました。これは、第1次訴訟で住民原告の請求が認められた基礎になっているものと考えます。
(3)泡瀬干潟埋立事業では行政庁の「広い裁量権」が障害になりましたが、これは条例や生物多様性地域戦略などの制定である程度は克服できるのではないかと考えます。そのための運動が重要と思います。
4、泡瀬干潟埋立阻止の裁判の終結にあたり、ご支援をいただいた自然の権利基金会員の皆様、裁判を支えていただいた全ての皆様、住民原告の皆様に、尊敬と連帯の意を表します。ありがとうございました。

            

【ホームページのサーバー移転が終わりました】

いつもご支援くださり、心より感謝申し上げます。

先日よりご連絡していましたサーバー移転作業が無事終わりましたので

ご報告いたします。これまでと変わりなくお使いいただけます。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

            2017/12/6 一般社団法人自然の権利基金事務局

※(「自然の権利」基金通信vol.75[2016.10.1発行]より転載)

≪事件報告 上関「自然の権利」訴訟≫~上関現地進行協議の報告~

 2016年7月28日、「上関・自然の権利訴訟」の現地進行協議が実施されました。1日かけて、中国電力の原発設置予定地とされている室津半島の先端の「田ノ浦」と田ノ浦の沿岸に向かい合うようにして位置するハート型をした「祝島」を視察しました。上関原発関連の訴訟を通じ、裁判官が現地を訪れたのは初めてです。
まず、祝島から視察を行いました。祝島は島の中心部が山状に標高が高く、島の北東側の斜面にひしめき合うようにして集落が存在しています。約400名の住民がいますが、平均年齢は70代後半となっており、年金の他は、漁業・農業で生計を立てています。現地視察では、裁判の原告となっている住民の方に、祝島での生活実態や、田ノ浦に原発が設置されそこで過酷事故が発生した場合に、祝島の住民が避難をすることがいかに困難であるかについて、裁判官の前で、直接お話いただきました。
また、祝島と田ノ浦との距離は、わずか約4キロと至近距離です。視察では、集落より上に位置し山の中腹にある祝島小学校に行き、ここから集落及び対岸の田ノ浦を望み、その距離の近さを感じ取ってもらいました。
そして午後からは、祝島を出発し、田ノ浦湾沖合の船上から視察が行われました。海上では、埋立てや原発の温排水が田ノ浦湾に生息する希少生物や漁業に与える影響の説明を行いました。また実際にまきえ釣り漁や流し釣り漁を見ながらの漁業の説明も行われました。
その後、陸上から田ノ浦を視察し、希少生物の写真パネルを掲げて生態系の説明等をしました。
現地視察中、裁判官は熱心に話しを聴いており、田ノ浦の豊かな自然や、祝島の素晴らしい文化を充分に感じてもらえたのではないでしょうか。また、過酷事故が発生した場合に祝島の住民が避難することがいかに困難であるかも裁判官に感じ取ってもらえたと思います。
現地視察を踏まえ、今後は尋問に向けて準備を進めていきます。
これからもご支援の程、どうぞよろしくお願いいたします。

          (文)上関「自然の権利」訴訟弁護団 弁護士森田夢見

※(「自然の権利」基金通信vol.74[2016.6.25発行]より転載)

≪事件報告 シロクマ訴訟≫シロクマ訴訟が終了しました。

○シロクマ訴訟の紹介
2011年9月16日と2012年3月14日、シロクマ(ホッキョクグマ)やツバル国民等が申請人となって、電力会社等11社を相手方として、CO2排出を2020年までに1990年比で29%以上削減するよう求める公害調停の申請を、公害等調整委員会に行いました(弁護団長は籠橋隆明弁護士。弁護団員は全国各地の30名)。
これに対し公害等調整委員会は、地球温暖化問題は、「公害」ではないから公害等調整委員会で審理できない、公害調停で根本的な解決は不可能などとして、調停申請をいずれも却下しました。
そのため、上記の公害調停の申請人たち(日本人、ツバル国民、シロクマ他)が原告になり、国を相手として、上記却下決定の取消しを求めて、2012年5月(第1事件。原告29名)と同年8月(第2事件。原告19名)に、それぞれ東京地方裁判所に行政訴訟を提起しました(生活環境被害調停申請却下決定取消請求事件)。
シロクマについては、当事者能力がないとして、残念ながら訴え却下の判決となってしまいましたが、その他の原告たちの裁判が約2年間にわたり、続けられました。
しかしながら、2014年9月10日、原告らの訴えが退けられる判決が下されました。
私たちは、東京地方裁判所の判決は不当であるとしてすぐに控訴しましたが、東京高等裁判所は2015年6月11日、再度原告らの訴えを退けました。
そこで、私たちは、2015年6月22日、最高裁判所に上告受理の申立てを行いました。
しかしながら、2016年4月20日、上告受理を認めないとの決定が出されました。

○判決の内容
私たちは、二酸化炭素の排出は、環境基本法2条3項に規定される「公害」の中の「大気の汚染」に該当すること、また海洋の酸性化をもたらすなど「水質の汚濁」に該当すること等を主張しました。
それに対し、東京地方裁判所や東京高等裁判は、「大気の汚染」又は「水質の汚濁」に係る行為とは、①「周囲のそれとは異なる温度の水の排出その他いわゆる毒性等を含む物質又はそのような物質の生成の原因となる物質の排出等をして」②「当該排出等に係る物質等の影響が及ぶ相当範囲にわたり」③「大気又は水の状態等を人の健康の保護又は生活環境の保全の観点から見て従前よりも悪化させるもの」をいうと判断し、二酸化炭素は有毒なものとは言えないとして、「大気の汚染」や「水質の汚濁」には該当しないとしました。
しかしながら、環境基本法のどこを見ても、東京地方裁判所や東京高等裁判所の指摘する「毒性等」が必要であるような記載はありません。環境法学者である北村喜宜教授(上智大学)も、「『公害といえる大気の汚染』とは、人為起源による相当範囲にわたる大気環境保全上の支障を通じた健康・生活環境被害」であるとしており、毒性等が必要であるとは述べていません。
東京地方裁判所や東京高等裁判は、私たちの主張を退けるという結論が先にあり、そのために二酸化炭素の排出が「大気の汚染」や「水質の汚濁」ではないと理由づけるために、条文にない「毒性等」という要件を生み出したと考えられます。

○今後について
最高裁で審理する道が絶たれたことにより、シロクマ訴訟は終了することになりました。
しかしながら、温暖化問題は依然として残っておりますし、誰かが声を上げない限り、温暖化に歯止めをかけることが出来ません。
裁判では負けてしましましたが、私たちは今後も温暖化防止に向けた活動を継続していきます。               以上 

          (文)シロクマ訴訟弁護団 弁護士吉浦勝正

※(「自然の権利」基金通信vol.73[2016.2.25発行]より転載)

≪事件報告 上関「自然の権利」基金訴訟≫

 2016年1月7日~1月8日、山口県上関の田ノ浦及び祝島に「上関・自然の権利訴訟」弁護団の弁護士複数名で行き、現地を調査しました。
室津半島の先端には、田ノ浦という海岸があります。田ノ浦は、環境破壊が進む瀬戸内の中にあって、瀬戸内海平均21.4%を大きく超す75%もの割合で自然海岸が残っている地域であることもあり、瀬戸内海の中でも有数の自然環境が維持されている地域です。また、陸域で地下に浸透した淡水が湧水として海底から多量に湧き出しており、それによって透明度15mを超す極めて高い水質が維持されており、ここにはスギモクを初めとした貴重な海藻や貝類が生息し、スナメリ、カンムリウミスズメといった非常に希少な生物の宝庫にもなっています。
しかし、ご存じの通り、この田ノ浦は、中国電力の原発設置予定地となっており、私たち弁護団は、田ノ浦の沿岸に向かい合うようにして位置するハート型をした「祝島」の住民と協力して、原発設置に反対し、「上関・自然の権利訴訟」を提起して闘っています。
訴訟もいよいよ大詰めとなり、弁護団では、この裁判に対し消極的な態度を隠さない裁判官たちに、祝島の住民たちと会わせ、田ノ浦の豊かな自然や、祝島の文化をその目で見せて衝撃を与えるため、検証を実施させようと考えています。今回の弁護団による調査は、言わばその「リハーサル」でした。なんとか裁判官の心を動かし、良い判決をもらえるようこれからも頑張っていきたいと思っています。ご支援よろしくお願いいたします。

       (文)上関「自然の権利」基金訴訟弁護団 小島寛司

スクリーンショット 2016-01-28 09.45.20.png

カンムリウミスズメ家族群

 

 

 

【法人化しました】

これまでの「自然の権利」基金を法人化し、 2016年2月1日から

一般社団法人となりましたことをここにご報告申し上げます。

今後は遺言による寄付という形でも支援して頂きやすくなります。

引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

                                           一般社団法人自然の権利基金

≪沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟弁護団より≫
みなさま日頃のご支援ありがとうございます。
私たちは現在米国政府を相手に、米国の環境法を利用して、米国連邦巡回裁判所で裁判を進めています。本当の当事者である米国政府はこの問題にだまり続けていますが、私たちは米国政府にも大きな責任があると考え、ジュゴン訴訟を展開しています。
国内では沖縄県知事と政府との交渉が決裂し、政府は辺野古基地建設を強行しようとしています。沖縄では基地建設阻止に向けて様々な運動が展開しています。私たちもこうした沖縄の方々と連携をはかりながら裁判を進めています。
私たちは米国の環境派弁護士、米国内での環境保護団体と共同しています。米国内でもさらに大きな圧力をかけて基地建設阻止に向けて奮闘する所存です。引き続きのご支援をどうかよろしくお願いします。

   沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟弁護団長 弁護士  籠橋隆明

≪ ご報告  コトパンジャン・ダム裁判 ≫

2015年3月4日、最高裁判所に係属中であった「コトパンジャン・ダム訴訟」が上告棄却・不受理決定をもって、裁判が終結しました。

 「コトパンジャン・ダム被害者住民を支援する会」からのご報告を、ここに掲載いたします。◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 8396人の住民とWALHI(ワルヒ:インドネシア環境フォーラム)を原告とし、日本国、JICA(国際協力事業団:当時)、JBIC(国際協力銀行)、㈱東電設計を被告とする裁判が 開始されたのは、2002年9月でした。

 主な争点は、ダム建設による住民への被害と、象、虎、バクなどの

希少動物保護の不徹底や世界自然遺産の破壊に関する事実認定。

そして、 巨額のODA(政府開発援助)を供与し、ダム建設を計画・実施した被告らの法的責任の有無です。
原告側弁護団は、自ら数次の現地調査を実施し、百人を超える人々からの聞き取りや実地調査による書証を作成しました。また国内外の専門家による報告書や、文書提出命令裁判 (一部勝訴)により入手した被告側資料(詳細設計や完成報 告書など)を駆使して被害事実と被告側の責任を立証。

 さらに1審2審の口頭弁論では、のべ10人の原告と控訴人を日本に招請し、法廷での証言と意見陳述により被害事実を裏付けました。
しかし、2009年9月の東京地裁判決は被害事実を一切認定せず、

すべてはインドネシアの「内政上の問題」だとする不当判決を下しました。そして、2012年12月の高裁判決もそれを追認したのです。

 判決を不服とする住民(5921人)とWALHIは、それぞれ「上告受理申立て」と「上告」を行いましたが、2015年3月4日に最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は、「申立て不受理」と「上告棄却」の決定を行いました。

 それに対して、弁護団は直ちに抗議声明を出す(HP掲載)とともに、5月2日から代表を現地に送り、住民とWALHIに裁判終結の報告を行いました。 住民たちは日本での提訴により、インドネシア政府から水道設備や道路の改善、ゴム園整備への補助などの譲歩を引き出しました。

 しかし、12年が経過した現在、設備の老朽化や人口の増加などで住民生活は悪化しています。特に住居や土地がない若者たちの貧困は深刻です。また、ダム湖では無秩序な養殖で水質が悪化し、保護林の違法伐採などでダム上流部の土砂堆積が深刻化しています。
これら住民生活の悪化と自然環境破壊問題を改善するため、昨年

5月現地の法律家やWALHIを中心とするNGOにより、「コトパン支援ネットワーク」が結成されました。日本の弁護団と「支援する会」もこのネットワークに加わっています。
今後、現地では、若者の貧困と環境問題での裁判や、国際機関への働きかけが検討されています。
今後ともご支援よろしくお願いします。

        (文)コトパンジャン・ダム被害者住民を支援する会 

                      事務局長 遠山勝博


≪緊急報告 ~沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟~≫

 2月13日に米国ジュゴン訴訟の判決がサンフランシスコ連邦地方裁判所により出されました。判決は原告らの請求を却下するというものです。
  みなさまに応援していただいている訴訟がこのような結果となり,弁護団としては残念な気持ちでいっぱいです。特に,今,こうしている間でも辺野古基地建設阻止に向けて運動を進めているみなさんのことを思うと悔しくてなりません。
  私たちの裁判はこれまで,2005年,2008年に裁判所の判断が行われています。2005年については米国文化財保護法(NHPA)が,ジュゴンという日本の文化財を保護しているかどうか争われ,保護の対象となるという勝利の判決を得ることができました。
  2008年の判決では,米国政府は沖縄ジュゴンの保護を図っているか,米国政府が違法状態では無いかということが争われました。この時には,米国政府は沖縄ジュゴンに配慮しておらず違法状態であると裁判所は宣言しました。
  そして,今回,私たちは米国政府が基地建設に協力しないように,日本国政府が基地建設のために基地内立ち入り許可を出さないように裁判を進めました。ご存じの通り,日本政府は基地建設を着々と進めています。私たちはこれを禁止するべく裁判を進めた次第です。
  今回の裁判では,軍事,外交という高度に政治的問題に裁判所が立ち入って良いかどうかが問題となりました。「統治行為」という難しい論点が有り,高度に政治性のある行為には裁判所は立ち入るべきではないというルールがあります。裁判所は今の辺野古の実情からすればきわめて高い政治性が有るので判断できないとしたのです。
  しかし,この問題は既に提訴時からありました。日米政府間においてジュゴンを守れという裁判を始めたわけですから,最初から問題になっていました。実際,2005年にも同様の議論がされたのですが,裁判所は判断回避をしませんでした。今回の判決はこれまで他の裁判官が積み重ねてきた議論を覆すものです。
  私たちはこの判決に対して引き続き控訴する方向で検討を進めるつもりです。また,この裁判は米国でも有名な裁判となっています。米国内にも多くの支援者がいます。こうした米国の支援者とともにジュゴンや辺野古,大浦湾の自然を守るために引き続き活動を進めていく所存です。

  どうか,今後ともご支援をいただきますようお願い申し上げます。

          2015年2月19日
沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟代表
弁護士  籠橋隆明 

※(「自然の権利」基金通信vol.70[2015.2.25発行]より転載)

【事件報告 沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟】

~ジュゴン訴訟の裁判期日が開かれました~
辺野古のジュゴンの海に新しい米軍基地が建設されようとしています。
私たちは、米国文化財保護法(NHPA)がジュゴンを保護していることから,ジュゴンを保護するよう求めて2003年にアメリカの裁判所で沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟を提起しました。原告は沖縄ジュゴンや沖縄県の人々,環境保護団体です。
私たちの提訴に対し、2008年,裁判所は米軍側に対しNHPAの手続きを守るよう指示する画期的な判断を下しました。その後日本において辺野古基地建設が膠着状態となったため当該訴訟は休止されていました。ところが、米政府は、2014年4月、突然辺野古基地建設によるジュゴンへの影響はないとする調査報告書を提出し、当該調査によって、NHPAによって要求されている手続を完了したと一方的に通告してきました。
これを受け、私たちは当該訴訟の再開を2014年8月に申し立て、2014年12月にその裁判期日が開かれました。裁判には、アメリカのNGOで本件訴訟の原告でもあるCBD(Center Biological Diversity)のメンバーの方や、他のアメリカNGOの方、沖縄2世、3世の現地在住の方々、ラジオや新聞などの報道関係者等に来ていただき、傍聴席はほぼ満席状態となりました。今後、裁判所から一定の判断が示される予定になっており、大きな局面を迎えます。
「自然の権利」訴訟はみなさんの支援のみに支えられています。どうか,引き続きのご支援をよろしくお願いします。

 (文)沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟弁護団 小林哲也

※(「自然の権利」基金通信vol.58[2011.8.25発行]より転載)

【事件報告 泡瀬干潟 第二次提訴】

 「自然の権利」基金の会員の皆さまに長年ご支援いただいている、沖縄県東部の泡瀬干潟保全のための裁判について、二次訴訟が提起されましたので、ご報告いたします。
  沖縄県と沖縄市が開発を進めている泡瀬干潟の埋立事業に対する、公金の支出差し止めを求める裁判は、2009年10月15日、那覇地方裁判所の判決(2008年11月19日、知事と市長に対し埋立・開発事業に関する将来の公金(税金)の支出を差し止める判決)を維持する判決が下されましたが(※)、国・県・市は、手を替え品を替え開発を進めようとしています。
  そこで7月22日、埋立事業は環境対策が杜撰なうえ、災害防止対策も不十分で、経済的合理性も認められない、として、対沖縄県原告275名と対沖縄市原告121名が、再び、公金の支出差し止めを求めて二次訴訟を提起しました。
  原告は、人間のほか「泡瀬干潟」や9種類の野生動物も名を連ねています。  今後とも、ご支援をよろしくお願いいたします。
                                                 (文)「自然の権利」基金 事務局
※詳細は「自然の権利」基金通信vol.47・51をご参照下さい。バックナンバーご希望の方は、お気軽に事務局までお知らせ下さい。

沖縄の美しい自然や人びとの生活を破壊する米軍基地問題に取り組む市民のネットワーク  JUCON (Japan-US Citizens for Okinawa Network) では、
日米の市民・NGOが合同で「美ら海・沖縄に基地はいらない!」キャンペーンを
行っています。(当基金が事務局になっています)

キャンペーンの第1弾として取り組み、沢山の皆様からご賛同をいただきました
「美ら海・沖縄に基地はいらない!」全面意見広告が、アメリカ時間の4月28日、ワシントンポスト紙朝刊のメインセクションに掲載されました。

みなさまのご協力に、心より感謝申しあげます。

詳細な広告の内容、日本での報道などについては、JUCONのブログ上に
掲載しています。(http://jucon.exblog.jp/

私達の政府に、なんとしても「自然への冒涜」を思いとどまって欲しい。
その気持ちを共有する皆さんにご利用いただければ、と、願っております。

また、この意見広告を一緒に出したアメリカ側のパートナー団体
Network for Okinawa(NO)では、署名を集めています。(5月末〆切)
http://salsa.democracyinaction.org/o/357/p/dia/action/public/?action_KEY=2932
日米両方から、この世論を盛り上げていくために、引き続き、
アメリカのキャンペーンなどを中心に、皆様にご報告していきたいと思っております。

今後ともどうぞよろしくお願い申しあげます。

≪緊急告知≫

みんなの力でアメリカの大手新聞に意見広告を出しましょう!!!
JUCO (JAPAN - US Citizens for OKINAWA)ネットワーク

「美ら海・沖縄に新しい米軍基地を造らないで!」という声を届ける

全面意見広告をアメリカ大手新聞に出すために、あなたの力をかしてください。

( 個人1口:1000円~、団体1口:3000円~でお願いしています。 )
【ゆうちょ銀行】
口座記号番号 00840-0-198250
加入者名 JUCOネットワーク
お手数ですが、最寄りの郵便局またはゆうちょ銀行備え付けの振込用紙(青色)にてご送金ください。
※ゆうちょ銀行の総合口座をお持ちの場合、ゆうちょ銀行ATMでの電信振替≪メッセージなし≫をご利用いただきますと、送金料金が無料となります。お手続きの際は、【記号】008400 【番号】198250 をご指定ください。
※他銀行からのお振り込みは、お手数ですが、お名前とご連絡先を事務局までご連絡いただき、以下の口座へご送金ください。
ゆうちょ銀行 〇八九(ゼロハチキユウ)店 ≪当座口座≫ 0198250

口座名義:ジュコネットワーク
詳しくはこちら→http://jucon.exblog.jp/

○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○

 私たちは、沖縄の美しい自然や人びとの生活を破壊する米軍基地問題に取り組む市民のネットワークです。

  沖縄の普天間基地移設問題の解決が危ぶまれるなか、普天間基地の閉鎖・撤去、沖縄県内に新しい代替基地を作らせないこと、ジュゴンも棲む美しい沖縄の海や自然を守ることを目ざして、危機感を共有した日米の市民が結集し、この緊急の呼びかけを発することになりました。このネットワークには日本だけでなく、ジュゴン裁判に協力する環境NGOや平和NGO、シンクタンクの関係者など、アメリカの市民もたくさん参加しています。今まで、それぞれの立場から、辺野古の美しい海を、沖縄の人々の生活を、沖縄の貴重な自然を守ろう、と活動していた人たちが連携して、日米両政府が政策を変更することを目指しているのです。
2010年1月24日に行なわれた名護市長選挙では、辺野古に新基地はいらないと掲げる市長が誕生し、また、2月24日には沖縄県議会が「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書」を全会一致で可決したにもかかわらず、いまだに、辺野古の海から新しい基地建設の計画が消え去っていません。 そこで、私たちはまず、
沖縄の美しい自然を基地によって破壊しないで!
沖縄のジュゴンを守って!
沖縄の人びとが民主主義によって示した意志を尊重して!
という3つのメッセージを載せた意見広告を、アメリカの大手新聞に掲載するためのキャンペーンを行います。
意見広告は、沖縄県民大会の開催にあわせ、4月25日直後の掲載を目指しています。多額の費用を必要とするため、 皆さんのご協力をお願い致します!!
日本の市民の声を、沖縄の人たちの願いを、アメリカの市民と一緒にアメリカ社会に届けましょう!!

<JUCOネットワーク世話人>籠橋隆明(弁護士・「自然の権利」基金)/ 田巻一彦(ピースデポ)/ 野平晋作(ピースボート)/ 花輪伸一(WWFジャパン)/
星川 淳(グリーンピース・ジャパン)/三石朱美(日本環境法律家連盟(JELF)事務局)

○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○

<事務局> 「自然の権利」基金 / 日本環境法律家連盟(JELF) 担当:三石
TEL:052-459-1753, FAX:052-459-1751
E-mail:jelf@green-justice.com
URL : http://jucon.exblog.jp/

呼びかけ人の皆様のお名前はこちら↓

http://www.jelf-justice.org/jucocampaing-ad.htm

 皆様、10月26日、沖縄県知事、沖縄市長は、泡瀬干潟埋立事業等が現段階では経済的合理性を有しないとして、これら事業に関する公金支出を禁止した10月15日の福岡高裁那覇支部の判決について上告を断念することを表明しました。まずは、住民側の勝利であり、皆様方と共に喜びたいと思います。

 ところが、知事及び市長は、同時に、土地利用計画を変更して引き続き、泡瀬干潟埋立事業等を続ける旨も表明しています。
しかしながら、上記高裁判決でも「今後策定される予定の土地利用計画を前提として、本件埋立免許等の変更許可が得られる見込みがあると判断することは困難である」と認定して、沖縄市が現在行っている「新たな土地利用計画」をも厳しく批判します。第1区域を埋め立てる前提での新たな土地利用計画の経済的合理性は極めて低いものと言わざるを得ません。このように実現性の極めて低い「新たな土地利用計画」に関し、今後も高額の税金を支出しつづけようとする知事及び市長の表明は、行政の最高責任者としてとるべき正しい選択と言えないことは明白です。

 埋立予定地である第1区域内の海域には、当初の環境調査で挙げられていなかったスギノキミドリイシ、リュウキュウキッカサンゴ、ヒメマツミドリイシなどの貴重なサンゴが生息していますが、これは2000年の埋立許可後の2005年に泡瀬干潟を守る連絡会が発見して事業者に指摘して、初めて事業者側も認めたものです。これも、当初に事業者が行った環境影響評価が杜撰であったことをを如実に示しています。第1区域の護岸は既にほぼ完成していますが、辛うじて海水の出入りがあるので、サンゴはけなげに生き続けています。2009年1月から国等の事業者が強行した、第1区域への浚渫土砂の投入は、これら辛うじて生きているサンゴやその他の生物を生き埋めにすることでした。これが「環境と開発を両立」させた埋立と言えましょうか。

 沖縄市が現在策定中の「新たな土地利用計画」も含め、泡瀬干潟埋立事業等に関する沖縄県、沖縄市の計画は、裁判所において経済的合理性を否定され、しかも豊かで貴重な生態系を破壊する、21世紀の今日では到底受け容れられない計画です。
泡瀬干潟埋立の企てを根底から白紙に戻す闘いに、今後とも皆様のご支援をお願いします。

泡瀬干潟「自然の権利」訴訟弁護団

 2009年10月15日、福岡高等裁判所那覇支部は、泡瀬干潟「自然の権利」訴訟(泡瀬干潟埋立公金支出差止等請求控訴事件)について、沖縄県知事及び沖縄市長に対し、泡瀬干潟埋立等に関する公金支出を差止めた一審判決を支持する旨の判決を言い渡しました。
同判決は、泡瀬干潟埋立及び沖縄市東部海浜開発事業が経済的合理性を欠く旨を改めて確認しました。
泡瀬干潟は、沖縄県における最大の干潟であり、生物多様性の程度も高く、その貴重性及び保全の必要性は国内外において共通の認識となっています。にもかかわらず、国、沖縄県及び沖縄市は、合理性のない計画と杜撰な手続により、本件埋立工事を強行し、泡瀬干潟の生態系を破壊してきました。
控訴審判決はこの暴挙に対し明確な審判を下したものであり、これを高く評価します。
沖縄県及び沖縄市は本判決に対し上告をすることなく、直ちに泡瀬干潟埋立事業、東部海浜開発事業を中止し、同干潟を全面的に保全すべきです。また、国も同様の措置を取るべきです。

 また、皆様方のご支援に感謝しますとともに、改めて、引き続きのご支援をくださいますよう、今後とも、よろしくお願い致します。

泡瀬干潟「自然の権利」訴訟弁護団

詳細は、 以下「泡瀬干潟を守る連絡会のブログ」をご覧ください。
http://saveawasehigata.ti-da.net/

 2009年10月1日、広島地裁は鞆の浦世界遺産訴訟(いわゆる鞆の浦埋め立て架橋計画の公有水面埋め立て免許の行政訴訟)による差し止めを求めた請求を認容する画期的な判決を出しました。

 判決の要旨・会見の様子はこちらからご覧ください。

以下、原告の方からの緊急要請です。

 今回の裁判では、「文化的,歴史的価値を有する景観として,いわば国民の財産ともいうべき公益である」と司法が判断しました。
にもかかわらず、広島県の丸山空港港湾部長は、「判決は、承服できない」とし、「免許手続きをつづける」とコメントを出しました。
しかし、広島県議会建設委員会では、事業の見直しの声もあがったということです。

 そこで、広島県と福山市に対して控訴をしないよう求めるはがきや手紙、メールなどを送っていただけないでしょうか。
今回の報道を受けまわりに興味をもたれた方やお知り合い、ご友人など多くの方にも声をかけていただき、メッセージを送ってください。

○送り先○
1 広島県知事 藤田 雄山
〒730-8511 広島市中区基町10-52
souhisyo@pref.hiroshima.lg.jp
2 広島県議会議会事務局
〒730-8509 広島市中区基町10-52
gikaisoumu@pref.hiroshima.lg.jp(総務課)
3 福山市長 羽田皓
〒720-8501 広島県福山市東桜町3番5号
hisho@city.fukuyama.hiroshima.jp

 上記3カ所に対し、2009年10月14日までに「判決を重く受け止め、控訴しないように」と要望をお送りください。
司法が「鞆は国民の財産である」と認めていますので、住んでいる地域などは関係ありません。
一人でも多くの声を届けていただければと思います。

 事業が完全に中止され、鞆の浦が永遠に守れるまで、私たちは頑張ります。
どうか、引き続きご支援、ご協力を頂ければ幸いです。

 2009年2月10日に、鹿児島地裁にて「馬毛島(まげしま)損害賠償請求事件」の弁論が行われました。原告側の馬毛島開発は欠席でした。そして、原告が請求を放棄して訴訟が終了しました。被告側が実質勝訴したことになります。
この裁判は、2008年1月に、馬毛島の乱開発を行う馬毛島開発株式会社が、郷土の自然を守るため裁判を起こしている漁師たちを相手取り、「裁判をしたことによる慰謝料請求(総額1,200万円)」をした、住民運動を潰すことのみを目的とするような裁判です。
本件では、かねて裁判長より2009年2月の結審が伝えられており、原告被告双方は、最終準備書面を2008年12月中に提出するよう求められていました。
被告側(環境保全派漁師ら20名)は、専門家の詳細な意見書を軸に準備書面を提出しておりましたが、原告側は提出することが出来ず、1月になって「訴えの取り下げ書」を裁判所に提出してきましたが、被告側は取り下げに同意しませんでした。
そうしたところ、2月4日に原告側が異例の「請求放棄書」を裁判所に提出し、今回の訴訟終了となりました。
「訴えの取り下げ」と「請求放棄」の違いは、前者の場合、原告が同じ裁判を再び起こすことが妨げられないのに対し、後者は、請求棄却判決が確定したのと同様に「損害賠償請求権の不存在」について既判力が生じるため、二度と同じ裁判を起こすことが出来ないという点で、決定的な違いがあります。
原告の請求放棄によって、被告が実質勝訴したことになります。

 多くの方々からのご支援で2003年9月より裁判を続けておりました、沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟は、2008年1月24日、勝訴判決を勝ち取ることができました。今後、この判決を有力な手段としてさらに運動を前進させる所存です。
アメリカの裁判制度ではジュゴンが確実に守られる環境が整うまで、裁判は続きます。
ぜひ、会員になって裁判を支えてください。

 2007年12月30日、朝日新聞の特集『環境ルネサンス』に、「自然の権利」訴訟が大きく取り上げられました。
私ども、「自然の権利」基金と、連携している日本環境法律家連盟(JELF)はこの取材に協力したり、関係者の方々に協力を依頼したりしました。
おかげさまで、写真や図表が豊富な大変わかりやすい記事にまとめて頂きました。

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